【ジブリ飯】『魔女の宅急便』の”ニシンとかぼちゃの包み焼き”は本当はちゃんと美味しい!!?
「ジブリ飯」史上最マズの不名誉料理!!?
今回再現した「ジブリ飯」はこちら。
“私このパイ、きらいなのよね”
そうです。『魔女の宅急便』からおばあさんの得意料理”ニシンとかぼちゃのパイ包み焼き”です!!
実をいうと料理自体はだいぶ前に作ってはいて、記事を書くのをさぼっていただけなのですが…(笑)

さて、こちらのパイ包み焼きもは「ジブリ飯」の中でも知名度トップ争いに食い込むのではないかというほど有名な料理ですね。
とはいうものの残念ながら他の「ジブリ飯」とは異なり、”おいしくない”という不名誉な評価で有名なのですよね。「ジブリ飯」といえば美味しそうな料理という世間のポジティブな評価の中にあって、唯一(?)マズそうと思われてしまっているこの料理。
でも、きちんと作ればきちんと美味しいのです!!では、今回は”ニシンとかぼちゃの包み焼き”の不名誉を挽回してみよう!!
…と、その前にこの「ジブリ飯」について、いつも通り長々と考察やらなにやらをば…。奇特な方はお付き合いください。お急ぎの方は読み飛ばしてください。
ではでは…。
*当ブログでは他にも「ジブリ飯」を多数再現しています興味があればそちらもどうぞ。
私このパイ、キライなのよね!!
さて、この「ジブリ飯」がおいしくないと言われている原因は幾つか考えられますが、やはり一番大きな原因は上にも書きました”私このパイ、きらいなのよね“という孫娘のセリフでしょうね。
実際、この孫娘に悪印象を持つ視聴者は少なからずいるそうです(笑)
とはいうものの、この配達はキキにとって初めて”仕事”の厳しさを教わる重要な経験でもあるわけですよね。
仕事は必ずしも楽しい場面ばかりではありませんし、誰もが好意的であるとも限りませんからね。実際厳しい目で見ると、キキはまだ”仕事”として”宅急便”をする覚悟が足りてないように見えます。
とはいえ、孫娘もわざわざ他人である宅急便屋さんの眼の前で文句を言うのは子供っぽすぎると思いますけどね(笑)

時に、なぜ孫娘はこの料理が嫌いなのでしょうか。個人的には料理自体がおいしくないという理由ではないのじゃないかと思ってます。おそらく、孫娘がこのパイを嫌った理由としては以下のようなところではないかな。
- 子供の味覚と大人の味覚の違い。
- 何度も送られて飽きてしまった。
- おばあさん自体がちょっと苦手。
上記は正直自分の体験談も含まれた考察です(笑)。
実際、孫娘はいわゆる普通の若い女の子といった感じで描かれていましたし、ものすごく舌が肥えていたり、味覚が大人びていない限り子供の味覚は、野菜より肉、煮物より揚げ物、あんこより生クリーム…etc.なわけです。どれだけ美味しい肉じゃがでも、子供はどうせ同じような材料ならカレーにしてくれよと思うものですよ(笑)。
そもそも特別好きな物でない限り何度も同じ料理が送られてきたりすると飽きますし…。祖母からの贈り物となるとお礼だとかいろいろ面倒ごと(こんなこと言ってはいけないですが笑)が多いので心理的にも嫌になるものです。実際はあまり好物でなくても本人には直接言えなかったりね(笑)。
つまり、この料理自体には何の罪もないのだ!!…などと主張してみたいわけでして。。
兎にも角にも、孫娘の言動がこの”ニシンとかぼちゃのパイ包み焼き”にネガティブな印象を与えているだけで、料理自体は美味しいはずだ!という方針で進めていきましょう(笑)
本当は美味しい!!?世間でまずいと言われているのは何故??
実際のところ、孫娘の言動を除けば”ニシンとかぼちゃのパイ包み焼き”の作中の描写はどれを取っても美味しそうにしか見えません。
見た目も美味しそうですし(蒔オーブンで焼く特別感もある??)、何よりおばあさんが得意料理と豪語しているくらいですからね。
そもそも得意料理と豪語している以上、おばあさんがよほどの味音痴か、あるいは自分ではこの料理を口に入れたこともないか、でない限り”まずい”わけはないのです!!

それでは何故この”ニシンとかぼちゃのパイ包み焼き”は世間でまずい、まずいと評価されているのでしょうか?
個人的には理由として以下の5点がありえそうな気がします。
- 孫娘の言動
- 作り方がブラックボックス
- 馴染みのない食材の組み合わせ
- 理由不明な”パイにはベシャメル”の先入観
- スターゲイジーパイ
少し詳しく説明しますと…。一つ目はすでに書いたので割愛。
日本人には馴染みがない食材の組み合わせ??
まず作る上で、想像がつかないという点が大きなネックになっているであろうことは想像に容易いところです。かぼちゃとニシンが使われたパイであるのはわかりますがほかは一切不明なうえに、似たような有名料理も存在しないので得体が知れません。
しかもかぼちゃとニシンという日本人には馴染みのない組み合わせ。宮崎駿氏(あるいは原作者の角野栄子氏)が何故この組み合わせを思いついたのかが不思議なくらいです(笑)

日本ではニシンといえばニシンそばくらいでしか馴染みがないですね(北海道にはニシン漬けがありますが)。しかも、生のニシンが手に入れば話は早いのですが、日本では干し物(身欠きニシン)以外はなかなか手に入らないので、初見では扱うのがやや難しい(戻し方や臭み抜きなど)食材です。
*きちんとした処理しなければ臭みが強く食べれたものではありません。酢漬けニシンなどもありますが、これちらも調理用にはあまりお勧めできません。
魚のパイへの思い込みとスターゲイジーパイ??
そして、これは幾つかの「ジブリ飯」の再現ブログを拝見して思ったのですが、なぜか皆さんそろい踏みで”ベシャメルソースを入れればいけるだろ”みたいな感じでパイを作られていました。
魚介のパイ包みにはベシャメルソースを下敷きにしたソースが使われることも多くありますが、それは使う食材との相性が良いからで、必ずしもパイにはベシャメルソースを入れなければならないわけではないのです。
そもそもベシャメルソースでごまかせるだろう、なんて発想で作れば美味しくできないのは当然のことです。(←素人が生意気言ってます。すみません。)

ニシンは調理法によっては乳製品との相性はけっして悪くはありません(北欧などでも見かけます)が、特にニシンの臭みがきちんと抜けていない場合は惨劇が引き起こされることになりますので注意です!!後、個人の見解ですが、牛乳よりは生クリームの方が断然臭みが引き出されません。
そして、この「ジブリ飯」最大のネガティブキャンペーンは誰が言い出したのか「スターゲイジー・パイ(魚の頭が突き出している衝撃的なパイ)」ですね。”ニシンとかぼちゃのパイ包み焼き”のモデルがイギリスのスターゲイジー・パイだという流言蜚語(笑)がゲテモノ的印象を与えているようです。
ただ、そもそも『魔女の宅急便』の舞台はイギリスではありませんし、フィッシュパイであるという以外に何一つ共通点はありません。なんでこんな話が出回っているのでしょうね(笑)
*スターゲイジー・パイには主にピルチャードと呼ばれる大型のサーディンが使われます。代用としてニシンが用いられることもあるそうですが…。
さてと、偉そうに色々書きましたが、僕自身料理人でもない素人なので話半分でお願いします(笑)
“ニシンとかぼちゃの包み焼き”作ってみよう!!
長々と書いてきましたが、とりあえず作っていきましょうか。
では、「ジブリ飯」史上、最マズと言われる禁断のジブリ飯の再現飯に取り掛かります!!
色々と作り方はあるでしょうから、ご参考程度にどうぞ。
“ニシンとかぼちゃの包み焼き”の材料は…
さて、今回”ニシンとかぼちゃの包み焼き”を作るにあたって用意した材料は以下の通りです。あまりごちゃごちゃするのもなんなので、レシピはニシンとかぼちゃが主役の素朴な味になるようシンプルめにしてみました。
- 折りパイ生地
- 身欠きニシン
- かぼちゃ
- 玉ねぎ
- 生クリーム
- 塩
- ジュニパーベリー
折りパイ生地は、市販のパイシートでも代用可能です。
ジュニパーベリーは日本ではまだあまり知られていない(?)ようですが、西洋では比較的よく使われる調味料で、肉料理などの生臭さをとってくれるスパイスです。ジンの香りづけにも使われています。
*GABANなどの有名メーカーで普通に販売されています。
いざ、調理開始!!
>>ニシンの準備をしましょう。
まずはニシンの下ごしらえからですね。ここ、重要です!!
うちの近所では生のニシンなんてまず手に入ることはない代物です。なので、今回使うのは身欠きニシン(ニシンの干物)です。
良質な身欠きニシンはしっかりと干されていてカチカチですので、水でしっかりと戻す必要があります。その際に、ニシン独特の臭みを除いて柔らかく戻すために、ただの水ではなく糠と昆布を一緒に入れます。米のとぎ汁が使われることが多いですが、僕は糠を溶いた水を使う方をお勧めします。
ニシンの干し具合にもよりますが、今回は丸々2日糠水につけて戻しました。糠水は1晩毎に取り替えます。

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>>ニシンをオイル漬けにしておきます。
お次のステップでは、ニシンをオリーブオイルに漬け込んでいきます。ニシンの風味良くして、味を凝縮させる意図があります。
コンフィを作る感覚でディルなどの香草、塩、ブラックペッパーを使って、低温のオリーブオイルでじっくりと煮ていきます。
低温のオイルでじっくりと火を通したおかげか、なかなかの食感。もともとニシンは身がしまっていてかつ身離れが良いお魚なので、とても良い感じです。ふっくらしつつも歯ごたえもあり、旨味も凝縮しており、この時点でとても美味しく仕上がっています。
ついつい、つまみ食いが…いけませんね。次に進みましょう。
ニシンはオイルにつけたまま1~2晩ほど寝かせておくとさらに風味が良くなります。

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>>かぼちゃは湯がいてマッシュです!!
さて、もう一つの主役のかぼちゃさんの出番です。
かぼちゃはひたひたのお水とともにお鍋に入れて火にかけます。今回はかぼちゃの皮をむかずに使っています。切り方の大きさによって火の通り加減が変わりますので、水の量と火にかける時間とを調整しましょう。
水気がなくなるまで煮詰めたらマッシャーを使ってかぼちゃを粗めのピュレ状にしていきます。完全に滑らかなペーストにしてしまっても良いのですが、粗めの塊が残っている方が食感も楽しくなります。
それに、あくまで”ニシンとかぼちゃ”のパイ包み焼きということで、ニシンとかぼちゃは対等に主役です。かぼちゃの主張も残すという意味でも粗めにとどめました。

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>>玉ねぎとニシンを炒めていきます!!
さて、ざっと下準備は終了です。包み焼きのフィリングを作っていきましょう。
味のベースに玉ねぎは欠かせませんので、みじん切りの玉ねぎを用意します。
フライパンに、ニシンを漬け込んでおいたオリーブオイルをたっぷりと敷き、火にかけます。オイルが温まったら、玉ねぎを甘味が出てきつね色になるまで丁寧に炒めていきます。
さらにニシンを加え、さっと炒めあわせます。ニシンには既に火が通っていますし、必要以上に火を入れて硬くなたり身が崩れたりするのも避けたいので、本当にささっとだけ炒めあわせます。どうせこの後オーブンで焼きますしね。。

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>>かぼちゃを追加しましょう!!
さあ、フィリングを仕上げていきますよ〜。
フライパンを火にかけたまま、炒めあわせた玉ねぎとニシンに先ほどマッシュにしたかぼちゃを加えます。さらに、生クリームを適量加えて、木べらで全体にあえるようにして混ぜていきます。(もちろんニシンの臭みをしっかりと覗いている前提です。)
かぼちゃやニシンの身を崩さないようにやさしく行いましょう。
最後の仕上げに塩で調味します。今回の包み焼きは後がけのソースを使用しませんので、フィリングにしっかりと味をつけておきます。
さて、と。包んでいきましょ。

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>>パイ生地を広げてフィリングを詰めていきます。
今回はパイ生地の作り方は割愛します!記事が無駄に長くなるので。。材料のところにも書きましたが、市販のパイシートでも代用できます。
パイ生地は練りパイではなく折りパイですよ!!
器の大きさに合わせて、麺棒でパイ生地を伸ばしておきます。器の底と側面に薄くバターを塗り伸ばしたパイ生地を敷いたら、先ほど作ったニシンとかぼちゃのフィリングをたっぷりと入れましょう!!
これで調理行程は8割は終了です。ここからは料理技術というよりは、美術の心得が試されます。ちなみに僕の高校での美術の評価は10段階で8 or 9だったはず…。
では行ってみましょう!!

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>>パイ生地にお魚を描いていきましょう!!
さあ、センスが試されますね…。これがこの「ジブリ飯」最大の山場とも言える部分です。
パイ生地を使って生地表面にお魚さんの柄を描いていきます!!
ただ厄介なのは、使っているのは折りパイ生地ですから、失敗は許されないということ。折りパイ生地というのは、バターと小麦の生地が何重にも層となっているものです。なので、練りパイ生地と違って失敗したら練り直せば良いなどということはありません。
というわけで、ペティナイフで生地を魚型に切り出すのはまさに一発勝負!!
背景の長い斜め線、魚の形、魚の模様用の短い縦線、ヒレ、目、口を切り抜かなくてはなりません。まあ、なんとかうまくいったかな。

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>>オーブンで焼く前のお仕上げ!!
なんとか、うまいことお魚柄を作ることができたので、最後の仕上げです。
オーブンで焼きに入る前に、焼き上がりの照りを付けるための処置をしておきます。
卵黄を水で薄めた卵液をパイ生地の表面に塗り、ジュニパーベリーを飾り付けます。
劇中ではオリーブを使っているように見えますが、サイズが2まわりほど小ぶりで再現していますので、ジュニパーベリーで代用。
あしからず。
正直、味的にはオリーブより相性いいと思いますが…。

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>>オーブンで焼く前のお仕上げ!!
さあ、準備完了です!!いざ、オーブンで焼き上げていきましょう!!
オーブンは余熱で200度にしておきます。
加熱時間は1時間~。まあ、パイ生地の焼き色が良い感じで付いたらokです。
あとはただただ焼き上がるのを待つだけ。。
焼く前はなかなかな出来と自負しますが….。果たして焼き上がりはいかに?? 乞うご期待です。

“ニシンとかぼちゃの包み焼き”作った感想!!
さて、今回は『魔女の宅急便』より”最マズ”と評判高い「ジブリ飯」”ニシンとかぼちゃの包み焼き”をつくってみました。
パイの焼き上がりはこちらの通り!!なかなかよろしいのではないでしょうか。

いい焼き色に仕上がりましたし、お味の方もなかなかよろしい。
というか、普通に美味しいですよ、”ニシンとかぼちゃの包み焼き”!!
かぼちゃもニシンもホクホクですし、かぼちゃの甘みとニシンの塩みの相性もいいです。
あ、あとジュニパーベリーも予想以上に良い仕事をしてくれました。
それにしてもおいしくないと言っている人たちは本当に作って食べたのでしょうかねぇ??
ちなみに断面はこちら。サクサクの生地に焼き上がりました。

それにしても、この表面に描かれた魚はなんだったのでしょうね。再現中はうまく作れるかに集中して気付きませんでしたが、この魚はニシンではありませんよね(笑)。
この背中からの腹に向けての縦柄はむしろヤマメとかですよねぇ(笑)。まあ、細かいことは言いっこなしですね。
とりあえず、個人的には出来はなかなか良かったと思っているのですが、どうなのでしょう。人の味覚は色々ですからね。
個人的満足にとどめておくのが無難ですかね(笑)